ご挨拶
私がSto工法(乾式吹付け工法)と初めて出会ったのは10年前である。その時の印象は、ズバリ「素晴らしい!」の一言。吹付け工法といえば、法面の保護工くらいしか知識の無かった私にとって将に衝撃的であった。吹付けのスピードといい、ノズルマンなリズミカルの動きといい、「使える!」というものであった。
阪神淡路大震災の数年前から、炭素繊維シートやアラミド繊維シートを用いた既存コンクリート構造物の耐震補強の研究を行っていた私にとっては、将に「使える」である。「時は金なり」と申しますが、乾式吹付け工法の施工性の良さに感動を覚えた。しかし、炭素繊維シートなどと組み合すわけにもいかず、あれこれ思案の結果たどり着いたのが炭素繊維を樹脂で格子状に加工した炭素繊維グリッドである。以来、炭素繊維グリッドと乾式吹付け工法を併用した、あるいは鉄筋と乾式吹付け工法を併用した既存コンクリート構造物の耐震補強法の開発を、StoCretec Japanのご協力を得ながら手掛けている。
乾式吹付け工法は、もともとコンクリート構造物の補修用としてドイツで開発されたものであり、日本に導入された当初は主に補修用に利用されていた。私の専門が耐震補強であったこともあり、耐震補強への利用を勧め今日に至っている。施工量も順調に伸び、なにより。関係者皆様のご努力とご苦労の賜物である。
さて、今日まで、私からの提案あるいはStoCretec Japanからのご依頼により、主に乾式吹付け工法に関連した様々な問題に関する共同研究を実施してきた。中には立派な果実として結実し、社会に大いに貢献しているものがある。一方で、中には日の目を見ないものもある。いずれにしても、新しいものを世に送り出すことは大変なことであり、大学との共同研究が必要不可欠である。共同研究の結果を論文として社会に公表し、多くの専門家に見ていただくことにより、信頼性へと繋がる。
ところで、国土交通省によれば、社会資本の高齢化が今後加速度的に進むと報じられている。20年後に建設後50年以上経過する社会資本の割合は、道路橋約53%、水門等約62%、下水道管渠約23%、港湾岸壁約56%とされている。人の社会活動の活発化とともに整備されてきた社会資本である。これから人口減少が進む社会で、このような資産をいかに上手く活用するか。補修・補強して使い続けるのか、それとも新しいものに造り替えるのか。何を残すのか残さないのか。国の根幹に係わる重要な選択を迫られる時期でもある。
公共投資が増えたからと、単に喜んでもいられない。とはいえ、心地よい追い風である。しかし、心地よさに浸ってばかりもいられまい。風が吹かなくなった時のことも考えておく必要がある。次なるターゲットは何か?次を見据えて、地道に研究面からStoCretec Japanを支えていきたいと思います。
氏名 |
宮内克之 |
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所属 |
福山大学 工学部 建設・建築学科 |
最終学歴・学位 |
昭和50年3月 鳥取大学 工学部土木工学科 卒業 |
所属学会 |
土木学会,日本コンクリート工学協会 |
専門分野 |
コンクリート構造,コンクリート工学 |
主な研究活動 |
著書・論文論文
学会発表
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教育活動 |
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主な学内役職・学内委員 |
構造・材料開発研究センター長(平成22年4月~) |
地域等社会活動 |
各種学外委員等
その他(社会活動)
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